3センチHERO

「ごちそうさま」


夕食を食べ終わり、いつものように手を合わせた。


「はい、お粗末さまでした」


まだ食べているお母さんは、笑顔で答えた。


その隣には、ラップで包まれた、お父さんの分のご飯。


「…まだ帰ってきてないんだね」


そこに視線を向けたまま、私はつぶやく。


「そうね、今日も忙しいんだって」


お母さんもまた、寂しげな瞳で口にする。


やっぱり、家族皆揃わないとなんだか物足りないな。


なんてしんみりした雰囲気になってしまったけれど、言わないといけないことを思い出し、私は話を切り出す。


「あ…あのね、お母さん」


「ん? どうしたの、改まっちゃって」

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