3センチHERO

「つ、次の土曜日って、何か予定あったかなと思って…」


「土曜日? えーっと、ちょっと待ってねぇ」


言いながら、冷蔵庫に貼ってあるカレンダーの方へと向かうお母さん。


「うん、特に何もないみたい」


「そっか、良かった」


思わずほっとするけれど、本当は何か予定があってほしかった。


逢坂くんの誘いを断る理由になったのに。


「けど、急にそんなこと聞いてくるなんて、珍しいわね。何かあったの?」


にやにやからかうように、それでいて嬉しそうに笑みをこぼしながら、席に着く。


やっぱり、正直に言わないとだめだよね。


「じ、実はね、クラスメートの男の子から、一緒に出かけないかって誘われて…」


「まあ…!」


「それだけ、なんだけど」


恥ずかしさのあまりうつむけば、お母さんの明るい笑い声が聞こえてくる。

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