3センチHERO
「あの、三枝く……」
「いいんじゃない?」
その瞬間、つぶやくように声にした。
「俺は鳴海の決断を待っていたんだよ。いちいち人の反応を気にして答えを変えるのは、いいことばかりじゃないから」
「えっ…」
突然のことで、上手く意味も分からずに、次の言葉を待つ。
「つまり、それでいいってこと! 鳴海は鳴海らしく、自分の思いのまま行けばいいんだから。何も心配すんな」
な、と小さな手で私の背中を押してくれる三枝くんに、私は思わず泣きそうになる。
三枝くんが悲しむから、両親が最近恋人らしいことを出来ていないから。
そんな周りの心情に揺れ、私には考えという考えがなかったんだ。