3センチHERO

パシャパシャとケータイが音を鳴らすたび、香澄がどんどん笑顔になっていくような気がして、いつの間にか俺はレンズを避けるのをやめ、ただ香澄を見つめていた。


「な、なに?」


「…あ、いや…特に意味はねえんだけど。ただ…」


「ただ?」


「やっぱり…俺も好きだったのかなと思って、香澄が」


「えっ…」


その瞬間、顔を赤く染める香澄。


「多分、だけどな」


「…うん、分かってるよ」


もどかしくて、切なくて。


ただ淡くきらめく小さな恋。


俺たちの青春は、きっとそんな感じだったのかもしれない。










去年のバレンタイン。


義理チョコだと言って渡されたのに、一緒に手紙も入っていて。


『ずっと前から好きでした』って書いてあったっけ。


告白されたのなんて初めてで、まあ、あれが告白だったのかは今でも分かんないけどさ。


どうしたらいいのか分かんなくて、でも嬉しくて。


とりあえず自室のベッドの上でジタバタしたのを、昨日のことのように覚えているよ。

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