3センチHERO
「もう食えねぇ。生クリームが強敵すぎる…!」
さっきはあんなにあんなに嬉しそうにしていたのに、今はそれが嘘のよう。
「残りはどうしよう…明日また食べる?」
「いや、もう当分スイーツはいらねぇわ」
「そっか」
未使用のスプーンを手に取り、代わりに私が食べる。
口に入れた瞬間、さっきまでこのケーキを三枝くんが食べていたことを思い出す。
つまり、間接キスになっているということ。
急速で赤くなっていく顔。
だけど変に意識したら嫌われちゃうかもしれない、と私は何とか最後まで食べきる。
食べ終わったときには、もうロールケーキが甘かったのか、彼のことを考えていたせいなのかはわからないくらい体が熱かった。