3センチHERO
「そうそう。この『神隠し』なんだけどな、厄介なルールが1つあって」
「ルール?」
逢坂くんが聞き返すと、晴継さんはまた険しい顔をする。
「本人が見つけてほしいと心で望んでいる人物、たったその1人だけしか、その姿は見えないんだ」
「えっ」
「つまりだ、少年を探すことができるのは、少年に選ばれた1人だけ、ということさ」
「そんな…」
それじゃあ、探し出すなんて出来ないかもしれない。
三枝くんが求めている人も、私たちには誰か分からないのだから。
「…じゃあ、俺たちは一体どうすれば」
隣で逢坂くんが頭を抱え込んでいると、階段を降りる足音が聞こえた。
「あらまあ、こんな朝早くからお客さんかしら?」
「お母さん…!」
半開きの目をこすりながら、パジャマ姿でこっちに向かう。