3センチHERO
「ありえなくはないかもしれないわよ」
うつむいた私に声をかけてくれたのは、三枝くんのお母さんだった。
「紘はね、私が再婚してからずっと暗い表情してたの。何の相談もなしに決断してしまった私のせいだっていうのは分かってる、分かってるんだけど、やっぱり悲しくて…」
手で涙顔を覆い隠す三枝くんのお母さんに、お父さんはそっと背中を撫でた。
「お前は悪くない。シングルマザーとして、ここまでよくやってきただろう」
「でも…」
「違う、これは私の責任なんだ。お前が心配になるばかりで、紘のことも、家族のことも、ちゃんと見えていなかった。本当にすまないと思っている。あいつがまた大きくなって戻ってきたら、もう一度、面と向かって話すつもりだ」
「…お父さん」
ドラマのような、フィクションのような。
小さいようで大きな世界が、目の前で繰り広げられていた。