3センチHERO

「そうね、家族皆で本音で話しましょう? この間の紘のように、言いたいこと全部」


「ああ」


涙を拭いて、三枝くんのお父さんに優しく笑いかけた。


それはそれは年相応の美しさで、私たちを感動させていく。


「…でね、鳴海さん。紘は、高校2年生になってから、少しずつ笑うようになったのよ。きっと、あなたに出会えたからなのかもしれないわね」


私の手を握って、まっすぐな瞳を向ける。


「ありがとう、紘に笑顔をくれて」


「…いえ、そんな」


笑顔をあげたとか、幸せにさせたとか。


そんな大げさなことをした覚えはなくて、何て返せばいいかが分からずに戸惑ってしまう。


三枝くんと一緒にいることで毎日が楽しく感じられたのは、私の方なのだから。

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