3センチHERO
「そうだな。よく考えると紘の選んだ相手って鳴海なのかもしれないな」
隣から聞こえた逢坂くんの言葉に、なぜか顔色が赤みを帯びていく。
三枝くんが私のことを好きっていうわけじゃないのに。
そういう意味じゃないって分かっていても、なんだか嬉しくて。
「お母さんの言うとおり、紘は最近、以前よりも感情を表に出すようになったよ。まあ、素直っていうか、分かりやすいっていうかさ。きっと、鈍感そうな鳴海のために、自分の思いを気付かせようとしているのかもな」
「自分の思いって…?」
首を傾げると、逢坂くんは大人のような余裕の笑みを見せて言った。
「それは、あいつ本人から聞くべきじゃねーの?」
「本人、から…」
一体私は、三枝くんから何を言われるのか。
頭で考えてみても、よく分からない。
けれどその答えは、もどかしい思いの正体と共に、三枝くんの口から発せられるのだろう。
楽しみな気持ちと、神隠しへの意気込みを胸に、私たちは三枝くんの家を後にした。