3センチHERO

次の日、まだ日の出かかっていないほどの朝。


早くに目覚めるなり、私は家を出た。


向かうはおばあちゃんの家。


少し遠いところにあるため、どうしても時間がかかってしまう。


移動に時間がかかって見つけられなかった、なんて言い訳は最終日にしたくないから。


電車に揺られながら、ふと窓の外に目線を向ける。


海が小さな煌きを放ち、爽やかな朝日に照らされていた。


「綺麗…」


気付けばそんなことを口にしている私。


けれどそんなことも気にならないくらい、車内は静かだった。


時折、電車自身がガタンと音を上げるだけ。


美しい景色と、誰もいない車内と、ただそれに身をまかせる私。


まるで1人旅行に来ているみたいで、少しばかり微笑みを作った。

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