3センチHERO
「どういうこと?」
「つまりは、一寸成就の意思は全て本人にあるということじゃ。小さくなってまで叶えたい願いも、神隠しから助けてほしい人物も、神隠しの3日間眠っていたい場所も──」
卵焼きを皿に盛り付け、テーブルに綺麗に並べるおばあちゃんの後をついて行き、同じように茶碗を置いた。
「探し人が結子なら、彼がいる場所は結子との思い出の場所だということじゃよ」
私に向けた柔らかな笑みは、心まで溶かしていく。
芯から優しい気持ちに包まれていくようで、なんだか魔法にかかったみたい。
だけど、そのおかげでようやく分かったことがある。
今朝この家に来た時、おばあちゃんが見当たらなくていろいろと探してしまったけれど、本当は寝室で眠っていたように、答えは意外とすぐ近くにあるのだろう。
私と三枝くんの思い出の場所といったら、きっと…。
「ありがとう、おばあちゃん。私頑張ってみるから…!」
「うん、頑張りや」
一緒に朝食を食べ、私はこの家を後にした。
そしてまた、長い時間をかけて戻る。
三枝くんの待つ、あの場所へ。