3センチHERO
昇降口で靴を履き替え、職員室へと向かった。
「…失礼します。2年、鳴海 結子です。遅刻届をもらいに来ました」
型にはまっただけの文章を使う日が来ようとは、きっと入学したばかりの私は想像すらしなかっただろう。
いや正しくは、三枝くんに出会う前の私は、かもしれない。
彼に出会ったことで、私自身が変わったのだから。
「おお、鳴海じゃないか」
職員室の奥から出てきたのは、ちょうど私の担任。
「珍しいな、遅刻とは。何かあったのか?」
「あ、いえ…」
どうやら、お母さんには連絡していない様子。
少しだけ、ほっと胸を撫で下ろした。
「今は……そうだな、体育でグラウンドにいるはずだ。教室に着いたら、着替えて向かうんだぞ」
担任が教えてくれたのは、恐らくクラスメートの居場所。
けれど、私が知りたいのはそんなことじゃなくて。