3センチHERO

とはいえ、はい、と返事した私は、遅刻届を受け取り、教室へと走った。

いつもならルールや校則を気にしていたはずなのに、今日は全く気にならない。


ただ早く、三枝くんに会いたい思いだけが、雪のように積もっていく。


早く彼のもとへ、早く彼の笑顔のもとへ──。


授業中だというのにもかかわらず、バン、と大きな音をあげて教室の扉を開けた。


案の定、室内には誰ひとりとしていない。


机の上に、置きっ放しの教科書や制服が散乱しているだけだった。


私は自分の席に着いてすぐ、筆箱を取り出して消しゴムを落とした。


あの日と同じように、コロン、と軽い音を鳴らして。


「──全く。あからさますぎるぞ、鳴海」


消しゴムの影から出てきた声が、姿が、私の胸を感動の渦へと引き込んでいく。

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