3センチHERO
「三枝くんっ!」
もう一度大きく名前を叫んでみると、ボン、と音を鳴らした煙が大きく舞い上がっていくと共に、彼の存在の感覚が手から消えた。
「う、そ…」
両手を目の前に持ってきてみると、何の変哲もないただの私の手があった。
それが意味することは、三枝くんの体が本当に消えてしまったということで。
「な、んで……私、ちゃんと三枝くんを見つけ…」
言いながら涙粒を床に落としたその一瞬。
未だ残っていた大きな煙から、人の形が浮き上がる。
そして、誰かの判別も出来ないまま、私は煙の中の人物に抱きしめられた。
怖くて、離したいのに……なぜか懐かしい匂いが鼻をくすめるから、自然と受け入れてしまう自分がいる。
「もしかして、三枝くん、なの…?」
するとその人は、何も答えないまま、腕を強く絡める。