3センチHERO

「ずっと、会いたかった……小さい俺じゃなくて、等身大の自分で」


震えた声で、つぶやくように言った彼は、どうしようもなく弱々しくて、どこか愛おしい。


そんな三枝くんの大きな、本当に大きな背中に手をまわす。


知らなかったぬくもり、知らなかった暖かさ。


3センチなんかじゃない、等身大の三枝くんがここにいた。


「……鳴海、ありがと」


耳元で囁くように放ったその言葉の意味には、きっと見つけたことだけではない気がする。


もっと深くて、大きい……海のような。


だからこそ、返す言葉が見つからなくて、上手く伝えられる気がしなくて、私は彼の背中にまわした手を、より強く抱きしめた。


存在を確認するように、再会の喜びを分かちあうように。

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