3センチHERO

お互いに何も言わず、しばらくの間、ぬくもりを感じていた。


そしてどのくらいか経った頃、廊下から大勢の人の声と、それと同じくらい大きな足音が聞こえた。


ふと時計に目をやると、もう授業終了を表している。


クラスメートが帰ってきたのだと分かるのに、時間はかからなかった。


「…三枝くん、皆もう来るみたい」


いつまでもこのままな訳にもいかず、私は手を解き、三枝くんの体を離そうとするが、一瞬離れた体を、三枝くんはまた捕まえる。


「まだ、もうちょっとだけ」


「ちょっ……!」


大きな体に、強い力。


こんな彼に勝てるはずもなく、私はされるがまま。


私たちは恋人じゃないのに…。


でもなんだか嫌だとは思えなくて、女子の私でも本気で抵抗すれば逃げられるはずなのに、心ではそれを拒否してしまう。


甘えられているようで、頼りにされているようで、なんだか嬉しい。

< 315 / 345 >

この作品をシェア

pagetop