3センチHERO
お互いに何も言わず、しばらくの間、ぬくもりを感じていた。
そしてどのくらいか経った頃、廊下から大勢の人の声と、それと同じくらい大きな足音が聞こえた。
ふと時計に目をやると、もう授業終了を表している。
クラスメートが帰ってきたのだと分かるのに、時間はかからなかった。
「…三枝くん、皆もう来るみたい」
いつまでもこのままな訳にもいかず、私は手を解き、三枝くんの体を離そうとするが、一瞬離れた体を、三枝くんはまた捕まえる。
「まだ、もうちょっとだけ」
「ちょっ……!」
大きな体に、強い力。
こんな彼に勝てるはずもなく、私はされるがまま。
私たちは恋人じゃないのに…。
でもなんだか嫌だとは思えなくて、女子の私でも本気で抵抗すれば逃げられるはずなのに、心ではそれを拒否してしまう。
甘えられているようで、頼りにされているようで、なんだか嬉しい。