3センチHERO
『逢坂』
三枝くんの誘導だけを頼りに、私は何も分からないまま道を歩んでいくと、そう書かれた表札の家の前に見事たどり着いた。
いかにも昔ながらの家っていうような感じで、ものすごく和風に満ちていた。
「すごいね、来たことあったの?」
「まあ、何回か」
ピンポーン、とインターホンを鳴らせば、逢坂さんらしき人の声が聞こえる。
女の人だったから、晴継さんの奥さんか娘さんであろう。
なんてどうでもいいようなことを考えていると、扉はすぐに開いた。
「あら、どちら様?」
「えっ、と…」
これまでの経緯をどう説明したらいいかがわからず、黙り込んでしまう私。
すると三枝くんは胸ポケットから顔を出し、この姿を見たら何が言いたいか分かりますよね、とでも言いたそうな表情でただ女性を見つめる。