3センチHERO
だが、ふと記憶の中を探ってみれば、三枝くんが教室にいる姿を思い出すことが出来ない。
これは、私の記憶力不足が問題なのだろうか。
うーん、と自問自答していると、それに気付いたのか、三枝くんが話してくれた。
「俺さ、いつも隣のクラスのやつと食ってんだよ。まあ今日はたまたま休みだったらしくてさ」
「へえ…」
小さく声を漏らすと、同時にさっきの女子2人が目に入る。
通り過ぎたはずの影は、どうしてかまたここに戻っている。
そして私の方を、羨ましそうな妬ましそうな表情で見ていた。
これは、三枝くんと一緒にいることに対する彼女らの思い。
きっとそう、いやそれ以外考えられない。
確信した私は、少し悲しいけれど三枝くんに話を切り出すことにした。
私と仲がいいって思われたら、たとえ三枝くんだとは言えど、嫌われてしまうかもしれない。
迷惑をかけるようなことはしたくないから。