オルレアンの空に花束を

└ side A





高く燃えゆく炎を、ただ見つめていた。


彼女を非難する群衆に紛れながら全てが燃え尽きるまで、ただ見つめていた。


十字に縛り付けられた彼女は確かにあの頃憧れ続けた人だったのに。

確かに、愛しいと思っていたはずの人なのに。


俺は何をすることも出来ず、ただその場に立ち尽くしていた。


どうして俺はここにいるのだろう。手を伸ばすこともせずに。


最後に微かに動いた彼女の唇は、一体何を伝えていたのだろうか。


彼女の全てが舞い散るなか、一人の女性がその灰を握り締め天を仰いでいた。


後悔するように。

懺悔するように。

自らを戒めるように。



「愛していたの」



微かに聞こえたその声と、零れた一筋の涙を美しいと思ってしまった俺はどこまでも罪深いのだろうか。




< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

七色ライラック

総文字数/74,406

恋愛(その他)244ページ

表紙を見る
たべちゃいたいほど、恋してる。

総文字数/197,799

恋愛(学園)574ページ

表紙を見る
スノードーム

総文字数/51,684

恋愛(純愛)200ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop