イケメンエリート軍団の籠の中
舞衣にとって、凪が一体どれくらいお金を稼いでいるのかとか、どれくらいすごい仕事をしているのかとか、そんな事にはあまり興味はなかった。
逆に、そういう事を聞けば聞くほど凪を遠く感じてしまう。
ちっぽけな自分との格差を思い知らされる。
でも、私の知っている凪さんはきっと誰も知らない凪さんだから、その幸せを今は噛みしめよう。
舞衣は気持ちを切り替えると、ジャスティンとの英会話の勉強にいそしんだ。
コンコン…
誰も来るはずのない社長室にあるフリースペースのドアを叩く音がする。
舞衣とジャスティンは顔を見合わせて、お互い首を横に傾げた。
ジャスティンが立ち上がったと同時に、来るはずのない来客が現れた。
「よう」
凪はバツの悪そうな笑みを浮かべ、片手にコーヒーカップを持っている。
「どうした?
お前がこんなところに来るなんて、珍しいな」
ジャスティンは何もかもお見通しみたいな顔をして、にやついてそう言った。
凪はそんなジャスティンは無視して、舞衣の隣に座る。
「おいおい、凪、邪魔なんだけど。
俺と舞衣は勉強中」
凪は軽くジャスティンを睨んだ。
でも、凪にとってジャスティンは、このフロアの中で唯一舞衣と話すことを許可している人間だ。
もちろん、完全なるゲイという性質のジャスティンは、凪の異常なほどの舞衣への保護本能に触れることはない。