イケメンエリート軍団の籠の中
「ねえ、何んで俺のいう事を聞かないの?」
凪の濃いグレーの柔らかい髪が舞衣の頬をくすぐる。
「お前、勝手にシャワー浴びてきたな?
匂いですぐ分かった」
凪は舞衣の髪に鼻をうずめてそう言った。
「凪さん、このご馳走は?
今日は何の日ですか?
もしかして、凪さんの誕生日とか??」
慌てふためいた顔で凪を見る舞衣のほっぺを、凪はむぎゅむぎゅする。
なんて可愛いんだよ……
「別に何の日じゃなくてもいいじゃん。
俺はうさ子に喜んでもらいたかっただけ…
なのに、来るのがこんなに遅いし……」
すると、舞衣は、少女漫画に出てくるヒロインのように目をキラキラさせて凪を見た。
「凪さん、すっごく嬉しいです。
こんな素敵なお部屋で、こんな美味しそうなご馳走を、それも何にもない日に私のために……」
凪が満足感に浸って舞衣を見ていると、突然、舞衣が凪に抱きついてきた。
「凪さん、これって、夢じゃないですよね…?」
凪は胸をギュッと鷲づかみにされた気がした。
自分しか愛せない人間が、初めて、自分以外の他人のために何かをしてあげたいと思った瞬間だった。
誰かのためになんて、恥ずかしい言葉だと思っていたのに。
今の俺は、舞衣に心臓を人質に取られた気分だ。
いや、きっと、自ら差し出したんだ。
俺の全てはお前のものだと……