イケメンエリート軍団の籠の中
「凪さん、もう、向かってもいいですか?」
タロウは荷物を荷台に乗せ終えると、凪にそう聞いた。
「そうだな、時間もちょうどいいし、向かってくれ」
舞衣はチラッと凪の横顔を見た。
でも、凪は、澄ました顔で何も気づかないふりをしている。
今の舞衣は、まるでシンデレラのおとぎ話の中にいるようだ。
ガラスの靴を手掛かりにお姫様を見つけた王子様と王子様を待ちわびていたお姫様とのその後を、少女の頃の舞衣はいつも想像して楽しんだ。
まるで、あの時夢を見ていたことが現実になったみたい……
舞衣は車の窓から外をずっと見ていた。
真冬の日没は早い。いつの間にか外の景色はオレンジ色に染まっている。
タロウの運転をするベンツは、都心の夕方の渋滞を抜け、どこか田舎の方に向かって走っていた。
でも、こんなにお洒落をして、一体どこへ行くのだろう…?
辺りが暗くなりだし、紫色の空が覆ってきた。
車はまるで大きな駐車場のような広いスペースに入って行く。
「舞衣、着いたぞ」
舞衣は、車の先にある大きな物体を見てつばを飲み込んだ。
う、嘘でしょ…??