イケメンエリート軍団の籠の中
ここはどこかの小さな飛行場なのだろうか……
舞衣達の目の前には黒塗りのヘリコプターが停まっていた。
「それでは、お嬢様……
これから本物の100万ドルの夜景を見に行こう」
凪はいつもの左側の口角を上げた笑顔で、舞衣の手を優しく握る。
キョトンとしている舞衣を見てますます柔らかい笑みを浮かべた凪は、さりげなく舞衣の緊張をほぐすようにゆっくりとエスコートして、舞衣をヘリコプターに乗せた。
「まるで19世紀のヨーロッパの上流貴族の人達が乗っていた馬車の中みたい…」
舞衣はひとり言を凪の前でつぶやいた。
鉄のかたまりの中とは思えないほどの豪華な内装だった。
ボルドー色のベルベッド生地の二人掛けのソファに、アンティーク風なサイドテーブル、そして、その雰囲気とは真逆に、両側の大きな窓にはパノラマの果てなき空が広がっている。
「凪さん、まさか、こんな高い所から夜景を見るなんて思ってなかった…」
舞衣は空に上昇するヘリコプターの中から、空しか見ていない。
ちょうど日が沈む直前の空は、息をのむほど美しかったから。
そして、子供のようにはしゃぐ舞衣を、凪は目を細めて見ていた。
もっともっと、舞衣を喜ばせたい…
凪は心の底からそう思った。