イケメンエリート軍団の籠の中
5人のイケメンエリートは何もコメントできずただ黙っていた。
だって、ここにいる人間からは想像すらできないあり得ないことだったから。
「なので、バイトを二つ掛け持ちしてました。
ファミレスと居酒屋の……」
舞衣はハッと我に返り話す事をやめた。
皆の表情が、未知との遭遇のような信じられないという顔をしていたから。
有り余るほどお金を持っている人達にとっては、こんな貧乏な暮らしはドラマの中での話なのだ。
舞衣はキョロキョロと5人の顔を見回しながら、不自然に口をつぐんでしまった。
「そ、そっか……
じゃ、舞衣ちゃんにとって、この会社に入れたことは最高にラッキーだったってことだ」
トオルは感動しているのか、半分泣きそうな顔で舞衣の手を握った。
「これからは困ったことがあったら、この中山トオルに何でも相談するんだぞ」
「……はい、ありがとうございます」
やっといつもの雰囲気に戻ろうと時間が流れ始めた時、奥の席に座っている凪が冷めたような口調でこう言った。
「あんたのお父さんって人は何やってんだ?
娘がこんな苦労をしてるのに、何の援助もないのか?」