イケメンエリート軍団の籠の中
「ねぇ、もしかして、スーツって、その二着しか持ってないの?」
舞衣はさすがに我慢ができなかった。
皆が皆、凪さん達みたいにお金をもってるわけじゃないんだと、言ってやりたかった。
でも、振り返って見えた凪の顔は、舞衣の大好きな優しい瞳をしている。
「い、今は二着しかないですけど、でも、近々、買う予定なので…」
舞衣はそう言うと、ちょこんと頭を下げて女子の部屋へ向かって歩き出した。
「あのさ~、着替えが終わったら俺のブースまで来て、分かった?」
舞衣はちょっとだけ後ろを振り向いた。
また、あの蛇のような怖い顔をしていたら無視して走り去ろうと思っていたのに、舞衣の目に映る凪の顔は優しかった。
舞衣は着替えを済ませ、罰の悪そうな顔をして凪の元へ向かった。
凪の部屋は雑然としていて、色々な本で埋め尽くされていた。
コンピューター関連の本はもちろんのこと、株や自己啓発本や、中には少年漫画も置いてある。
「ここに座って」
凪はそう言うと、舞衣を自分の隣に座らせた。
「こんな感じかな?
俺には今一つ分かんないから、適当にいいものを選んで」
「え? いいもの??」
舞衣が凪の開いているパソコンを覗くと、女性用スーツを扱ったショップのホーム画面が映し出されている。
それも、超高級ブランドショップのものが…