イケメンエリート軍団の籠の中



舞衣はアパートへ帰り着くと、自分のためにオムライスを作った。
オムライスだけは自信がある。
母親の味をちゃんと再現できる唯一の自慢の料理だった。

舞衣は一人暮らしを始めて、嫌な事や落ち込む事があると、必ず自分のためにオムライスを作る。今夜は頑張っている自分にご褒美をあげたかったし、それと、なんとなく母親の顔を思い出したから。

途中のコンビニで缶酎ハイも一本買った。

今夜は、食べて、飲んで、すぐに寝るぞ。


ピンポン


舞衣は、もう9時になろうとしているこの時間の来客に驚いて身構えてしまった。
以前、このアパートの界隈でピンポンダッシュの悪戯が流行り、このアパートも何度か被害にあった。

どうせまたそのピンポンでしょ?

舞衣は一回目は無視しテレビを観ていると、またピンポンと鳴った。
それも、今度のピンポンの音は、なんとなく寂しげで力が入ってないように聞こえる。

舞衣は玄関ドアの小さな小窓を覗いてみた。

何?これ??

そこには真っ白のもさもさした何かが視界を遮っている。
そして、目を凝らしよく見ると、そのもさもさの奥に誰かが立っていた。


「え~~~~」


そのドアの向こうに立っているのは、真っ黒いスーツにもさもさの花束を抱えた凪だった。









< 85 / 171 >

この作品をシェア

pagetop