光ることを忘れた太陽。
『可愛い。なんて名前?』
『あなたの弟の尚也よ。雅也に似てかっこいい顔立ちじゃない?』
『さすが俺の息子だ』
俺が、雅兄の病院へ行ったとき。
母さんも父さんも、雅兄も、みんな俺を歓迎してくれてた。
俺が生まれてきて嬉しそうな顔をしてた。
それは昔の話。今とは違うかもしれないけど。
俺の中では雅兄に初めて会った、大切な思い出なんだ。
「私は、尚也が大好きよ。お父さんもそう思ってる。だから……」
1人だなんて思わないで。
母さんは、今確かにそう言った。
その言葉が咲希の言葉と重なる。
『今も1人で抱え込もうとしてるんです』
抱え込もうとしてる、ってことは。
今はまだ、1人じゃない。
いつもそうだ。
俺は咲希に助けられてばかり。
1人のときなんてなかった。
だって心だけは繋がってるから。
俺が離そうとしたその手も、咲希は絶対に離さなかった。
それは自分のためじゃなくて、俺を1人にさせないため?