光ることを忘れた太陽。

「まぁ、あまり口出しはできないけど」


病室に沈黙が流れる。


ゴクリと息をのむ音ですら大きく感じるんだから。




「……僕、好きな人がいたんだよね」


そう言って口を開いた雅兄。



雅兄は、どんな恋をしてきたんだろう。


恋の苦しさや嬉しさ、俺はだいぶわかってるつもりだ。


だって、好きな人が隣にいるのに抱きしめることもできない。


想いは通じ合ってるのに伝えられないんだから。



「でもその彼女は、もうこの世界にはいないんだ」


驚きで声が出なかった。


もうこの世界にはいない、って。



「もう、亡くなってる……?」


雅兄は「うん……」と相槌をうつと、どこか遠くをぼんやりと見つめている。



きっと、その彼女のことを考えてるんだろう。


その瞳から、大切に想う気持ちがにじみ出てる。


それと同時に、雅兄がまだ彼女のことを想ってるのが伝わってきた。
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