光ることを忘れた太陽。

「良かったぁ。なんか暗い顔してたから」


咲希は満足そうにホッと息をついた。


暗い顔?俺が?


咲希、気づいてたんだ。



家を出る前に母さんと気まずくなると、気分が上がらないんだよな。


まぁ、いつものことだけど。




「でも……今の表情見てたら大丈夫そうだね!」


そんなこと、笑顔で言われたら……。


俺、都合のいいように考えちまうよ?


咲希が俺を心配してくれてたって。



咲希はいつもそうだ。


優しくて、人のことをよく気にかけて。


自分のことより他人優先で。



前に俺を助けてくれたときもそうだった。


情けない姿を見せちまったのに、笑顔で手当てしてくれて。


そのあたたかさに何度も救われた。



でも、俺は毎回「ありがとう」って素直に言うことができなくて。


たったそれだけの言葉なのに伝えられない。


だから、まっすぐな咲希が眩しく見えるんだ。
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