光ることを忘れた太陽。

「咲希……」


気がついたら名前を口にしていた。


無意識だったんだ。



「どうしたの?」


それなのに反応するから、俺は少し焦って。


「そ、そういえば、今日から卒業コンサートの練習だな」


その言葉を紡ぐのに精一杯だった。



なんで俺、名前なんて呼んだんだよ……。


絶対、不審に思ってるじゃん。



でも咲希は、そんな俺の気も知らないで。


「あ、そうだね!楽しみー」


と、1人で呑気なことを言っていた。



そんな咲希の姿を見て、俺も気分を切り替えることができた。


今日から練習なんだ、ってな。




卒業コンサートは卒業式前の最後の行事。


俺達の6年間を、音楽で親に伝えるんだ。



でも、俺の親はどうせ来ないだろ。


そんなことを考えてたなんて、咲希には言えねーけど。
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