女王様は憂鬱(仮)
*
それからの一月は、あっという間に過ぎた。
部内に私の異動が周知された後は、引き継ぎを兼ねた取引先への挨拶回りに追われることになった。
突然のことに驚かれ、今後を不安に思う取引先の方々も多かったが、後任が私の優秀な上司であること、一年後にはまた戻ってくることを告げた時、目に見えてホッとされたことは嬉しかった。
自分のこれまでの行いが認められている、そう思えたからだ。
けっきょく、私が受け持っている取引先については、課長と部長が二人で引き継ぐことになった。
私の異動に伴い、新しい人員を──という話も出たようだが、一年後に約束通り私が戻るのだからという理由で、人事から却下されたようだ。
長引く不況でどこもぎりぎりまで人員を削減している今、人を回す余裕はないということなのだろう。
正直、複雑な気持ちだった。
一人社員が抜けることで、間違いなくチームに迷惑をかけてしまうことは分かっているものの、私の後任がとても優秀な人材だったら、一年後、私の居場所は本当になくなってしまう。
だから、人が補充されないと聞かされた時は、内心ほっとしていた。我ながら、自分本位で身勝手な考えだと思う。
それでも、どうしても──私はここに戻ってきたい。