女王様は憂鬱(仮)



翌朝、五時半の目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
やけにスッキリと目が覚めたことに少しだけ驚く。異動の内示を受けてから、寝起きのよくない日々が続いていたのに。

外はまだ薄暗く、部屋の中の空気もひんやりとしている。カーテンを開けると、暗闇の中でもベランダの手すりに雪が降り積もっていることが分かった。


部屋の暖房のスイッチを押しテレビをつけると、思った通り、首都圏の交通機関に影響が出ているというテロップが表示されていた。

そこにはばっちり、私が通勤に使っている路線も対象に入っている。

(初日からコレって、ついてない……。せっかく気持ちよく目が覚めたのに……)


いつもは自宅で朝食を作って食べるけれど、今日は少しでも早く家を出た方がよさそうだ。
軽くシャワーを浴びてメイクをし、昨夜のうちに準備しておいたツイードのワンピースにジャケットを羽織って、鏡の前に立つ。
髪もアップにした方がよいかもしれないと思い、手早く後ろで一つにまとめた。

けれど──…

(うーん……なんか、違う……)


ドラマや漫画でよく見るような『ザ・秘書』という感じにならないのは、なぜだろう。
やっぱり、伊達眼鏡を買った方がいいのだろうか。

──いや、きっとこの派手顔のせいだ。

こればかりはどうしようもないのだから、諦めよう。

私は自分が思いつく限りのシックな装いに納得し、コートの上からストールを巻いて家を出た。

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