女王様は憂鬱(仮)
数えきれないほど経験してきた、この手の修羅場。残念ながら、耐性ならとっくの昔についてしまっている。
毎回不思議に思う。彼女たちは、一体何をしに会社に来ているのだろう。
一日中PCに張り付き、私を監視しているんじゃないかと思うほど、その日一日の私の言動を本人以上に覚えているのだ。
「大体ねぇ、あんた、今日村木さんに色目使ったでしょ。何がランチミーティングよ。ただ単に、村木さんに取り入りたいだけでしょ!? 仕事中に男誘うとか、信じらんない! 村木さんが知子さんの恋人だって知ってるくせに、最低よ、あんた!!」
このまま何も言わなければ、永遠に続きそうな私への恨み辛み。(ほぼ全てが逆恨みだけど)
───もういいだろうか。
いくら耐性があるとは言え、流石に我慢の限界だ。
私は化粧ポーチをバッグにしまうと、不機嫌オーラ全開で川北に向き直った。
そのオーラを感じ取ったのか、一瞬彼女が怯んだように見えたが、負けじと私を睨み返してくる。
私に一人で立ち向かって来る女はなかなかいない。三、四人で群がってくるのが常だ。
(そこだけは、褒めてあげなきゃね)
「言いたいことはそれだけかしら?」
「……は?」
「だから、言いたいことはそれだけかって聞いてるの。私、暇じゃないのよ。あなたと楽しくお喋りしてる時間なんてないの。だから、質問には一回でお答えするわ」