ご褒美
「……違うもん」

俯くと、目の前の椅子がまた回転して顔を覗き込んでくる。

「なにが違うの?」

「その、あの……」

自分の口からちゃんと云えなくて、もじもじしている私に、顕吾からまっすぐに視線が送られる。

その冷ややかな視線にドキドキして、もっと口ごもってしまう。

「なんでちゃんと理由、云えないの?」

「だってー」

完全に涙目になって黙ってしまったら、また顕吾がため息ついた。

……でも。

「ちゃんと云えない子は、あとでたっぷりお仕置きだね」

唐突に耳元で囁かれた声に背筋がぞわぞわと波だった。

思わず見上げるといつものように唇を歪ませて不敵に笑う。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop