溺愛妖狐ひろいました
遊佐先輩は、皆が言うように本当に厳しい人だった。
小さなことでもはっきりと的確な指示をだし、間違っていることはオブラートに包むことをせずはっきりとダメ出しをする。
その言い方は、いつも厳しく冷たいものであるけど、仕事に対する熱心さが伝わってくるから一生懸命それに応えたいと思う。
「ここ違う!それからこの案、もっと現実的な案考えろ。過去の資料見て参考にしてもいいから」
「は、はい」
「それからここ―――――」
目まぐるしく次から次へと指示が飛び、私の手元のメモ帳はすでにボロボロ。
必死に頭を回転させ指示されたことをこなしていく。
そう、ただこなしていくだけ。
追いついていくのに必死で、自分で考える余裕がなくなっていた。
「だから、そうじゃないって言ってるだろ!」
フロア全体に響き渡る声で怒鳴り上げられたのは、遊佐先輩と組んでまだ4日ほどしかたっていない日の午前中。
私が指示されたことをうまくできず、何度もリテイクすることになって、とうとう遊佐先輩の怒りに触れてしまった。
その叱責はもっともで。
私が先輩の意図をちゃんと汲めず、直すことができなかった。
私でも、できてないってわかっていたのに、どう直していいかわからずわからないままやってしまった結果だ。