溺愛妖狐ひろいました
「す、すみません。もう一度・・・」
「いい。俺がやるから。もう昼だし、お前休憩行って来い。今のお前ならいない方がまし」
「・・・っ」
深いため息が聞こえてきて、私の手から資料が乱暴に奪い去られる。
遊佐先輩は背を向けて自分の席へ戻ってしまった。
遊佐先輩の怒鳴り声で一瞬静まり返ったフロアは、気まずげに空気が戻ってくる。
同情の視線が私に集まっているのがわかって、いたたまれずその場を立ち去った。
悔しい。
うまくできない。
先輩のペースに、追いつけない。
でも、追いつかなくちゃいけないんだ。
だって、時間がない。
先輩は、限られた時間でいいものをって頑張ってるのを知ってる。
他にもたくさんの仕事を抱えている中で、私の指導をしながらイベントを進めていく。
それはきっと、とても大変なこと。
そして、きっと私じゃなかったら、こんな指導も必要なかった。
「・・・足手まといだ」
悔しくて、悲しくて、どうしようもなくて。
普段誰も来ない非常階段に逃げ込んだ。