溺愛妖狐ひろいました


「うぅっ・・・うっ・・・」




しばらくすると、なにやらミコトの唸り声が聞こえてくる。
ギョッとして慌ててみると、目からポロポロと涙を流しながら玉ねぎを切っていた。




「ミ、ミコト!?」

「うへぇん!あこぉ、これ痛い!こいつ、攻撃してくんの?」

「へ?あ、玉ねぎ切るとそうな・・・あ!ダメだよ、その手で目を触ったら!」

「うぎゃぁ!」

「ほら!」





ある程度もう切ってあったし、平気かと思ったらだめだったみたい。
というか、妖怪も玉ねぎは目に痛いんだ。

騒ぎ立てるミコトがなんだか可愛くて。
思わず笑いそうになりながら顔を洗うのを手伝う。




「うぅー」

「大丈夫?もう玉ねぎはやめよっか?」

「やだ、やる。ちゃんと最後までやる」

「そっか。じゃあ、もう少し細かい方がいいと思うから、もう少し頑張ってね」

「ん」



ミコトはキュッと口を結び気合を入れるように頷くと再び包丁を手にする。
一生懸命なミコトが本当に、愛らしいとすら思う。



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