溺愛妖狐ひろいました
「ムッとした顔はしないこと。ちゃんと返事をすること、挨拶もね。それから・・・」
「わかってる。愛想よくするし、ちゃんと会話もするよ」
私以外の人間との会話を想像できなくて不安が募る。
あれよあれよと、初出社の日がきてしまった。
ミコトはスーツに身を包み、見慣れた獣耳もふわふわの尻尾も封印した見た目はすっかり人間の姿。
違うのは、髪の色。
これは変化でどうにかできるものではないらしい。
真っ白な毛色。
私は綺麗で好きだけど、目を引くものだし、地毛だと言ってすんなり受け入れられるものでもないんだろう。
今日までに一度上司に顔合わせで連れて行ったときにも、驚かれた。
地毛ですと説明し、近くで髪を確認してもらってなんとか納得してもらった。
“訳あり”としてだと思うけど。
会社としては、お客様の前に出すわけではないし、仕事をちゃんとしてくれれば問題はないと言う構えみたい。
社員ではなくアルバイトだし。
「私の遠い親戚ってことにしてあるから。名字は雨宮ね。雨宮ミコトって名乗るのよ」
「うん。髪の色は生まれつきで、なんでかはわからない、だよね」
「そう」