溺愛妖狐ひろいました
「亜子と一緒に行きたいな」
「時間が違うんだから無理だよ」
「同じ時間にしてくれたらいいのに」
「無理」
職場の人には親戚だって話はしたけど、一緒に住んでいることは言っていない。
まぁ、ここにいることは遊佐先輩にはばれているし、本気で隠そうと思っているわけじゃないけれど。
尊に視線が集まっているこの状況でそんなネタを投入したくない。
嫉妬の詰まった視線なんて勘弁だ。
そうでなくても、ただでさえ、私にべったりな尊にみんなの視線が痛いんだから。
皆に言ってやりたい。
尊は確かに美形で人目を惹くスタイルの持ち主だけれど、その現実は妖狐で人間ではないって。
「じゃあ、お先にいってくるね」
「いってらっしゃい!」
「尊も、気を付けてね」
「うん!」
人間のスタイルを身につけつつある尊は、人に化けてしまえばもう見分けなんてつかなくて。
それは、何が違うのだろうと錯覚をする。