溺愛妖狐ひろいました


「びしょ濡れになったって、なに」



いつになく冷たい尊の声が飛ぶ。
私はビクッと身体を揺らした。




「この前、早退した日。こいつトイレからびしょ濡れで出てきたんだ。だから早退させた」

「・・・聞いてないけど」

「ごめん・・・、でも、言う必要ないかと思って」

「ケンカは後にしろよ。なんか、心当たりとかねぇのか」

「心当たり・・・」




全くないわけじゃない。
他人の特定になんてならないけど。
私が尊や遊佐先輩と関わりがあることが気に入らない人だってことくらい。
でも、そんなの本人に言えないよ・・・。




「水といい、絵具といい・・・。もしかして、昨日の鉢植えだってお前を狙ってた可能性だってあるんじゃねえの?お前、だからあんな怯えて・・・」

「そんな、確証なんてないですから!偶然ってことも・・・」




偶然なんてことないことくらい、本当はわかってる。
だって、非常階段に鉢植えなんてない。
ましてや落ちる可能性がある場所になんて絶対に置くわけない。




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