溺愛妖狐ひろいました
尊の纏う空気はとても恐ろしく、鋭く刺すような視線。
蔑むような、殺意を持った視線にゾクリとする。
怖い。
寝ぼけているわけではなく、本当に尊の持つ殺意を目の当たりにしてそう思った。
「あの手紙から、お前の匂いする。お前が、お前が亜子を傷つけた。許さない」
「いやっ・・・やめ・・・」
女性は、恐怖からか顔を真っ蒼にし、ガクガクと震えている。
ギリギリと絞められるのが苦しいのか顔を顰める。
だめだ。
とめないと。
「尊!お願い!やめて!」
縋るように何度も叫ぶ。
でも、尊の耳には届いていなくて。
どうしたらいいの。
尊に人を傷つけてほしくないのに。
尊自身が人から怖れられる原因だって作ってほしくない。
「やめろって言われてんだろ!ボケが!」
耳をつんざくような怒号と共に、グイッと後ろに尊の身体がひかれる。
尊はそのまま尻餅をつくように後ろに倒れこんだ。