溺愛妖狐ひろいました
だったら誰も来ない場所に移動しよう。
不審がられるだろうし。
「尊、ちょっと移動しよっか」
「ん・・・」
尊は尻尾も耳もシュンと垂れ下げている。
気分が全部そこに出てる。
私は苦笑しながら尊の手を引いて誰も使っていない会議室に入った。
慎重に人がいないのを確認し鍵をかける。
「尊、大丈夫?」
「・・・亜子。・・・ごめん・・・おれ、おれ・・・」
ポロポロと溢れだした涙。
うぐうぐ、としゃくりあげながら尊は俯いた。
「尊は、私のために怒ってくれたんでしょう?やり方は確かに間違ってたけど、その気持ちは嬉しかったよ」
「うぅ・・・っ、おれ、おれ、頭にカーッて血がのぼってそれで・・・」
「うん」
「遊佐の言った通りだった。おれ、亜子のためって想いながら、亜子悲しませるようなことした」
なんてきれいな涙だろうと思う。
きっと、私のことを思って、私のために流してくれてる涙。
純粋で、純真で、綺麗な心を持った尊だから流せる涙。