溺愛妖狐ひろいました
「こんなになるまで、気づけなくてごめん。尊はもう、私の事なんて大嫌いかもしれないけど」
どうしていつだって、気づくのが遅くて。
誰かを傷つけてしまうんだろう。
「私は、尊の事大好きだから。尊が大好きで、大好きで、側にいたいの!」
一歩踏み込んで、尊の服をグイッと引き寄せ。
おしつけるように唇を重ねた。
柔らかい唇の感触なんて、感じる余裕なんてなく。
ただ押し付けるように。
尊は一瞬ビクッと身体を揺らしたけれど、固まるように身体が止まる。
時が止まったかのような一時。
「・・・ごめん、嫌だったよね・・・」
咄嗟だった。
我に返って思わず謝りながら唇を放す。
尊は、少し落ち着きを取り戻した様子で、ぽろっと瞳から涙を零した。
「・・・おれ、おれ・・・、亜子・・・、亜子、ごめ・・・」
尊の涙。
いつもの、尊。