溺愛妖狐ひろいました
「尊、大丈夫?身体は?しんどいところは?」
「・・・大丈夫。でも、おれ・・・、亜子に酷いこと・・・」
「ひどいことなんて、一つもしてないよ。尊が戻ってきてよかった」
ホッとして笑みがこぼれる。
もう、戻らないと思ってた。
こんな穏やかな尊。
「・・・おれ、思い出した・・・。思い出したんだ、昔の事」
「うん・・・」
「思い出したら、人間への憎しみが抑えられなくて。亜子の事大好きだったのに、亜子の事もおれ・・・」
「うん。大丈夫。仕方ないよ」
「でも、でも、おれ、亜子の事は憎みたくない。恨みたくない・・・。だって、亜子は、おれを助けてくれたから」
それはきっと、私自身のためで。
きっと純粋な気持ちじゃなかった。
それでも、尊はそんな風に思ってくれて。
それが当たり前だって思ってたんだ。
「亜子・・・、おれ、怖い・・・。自分が、自分の感情が・・・抑えられない・・・」
「尊・・・」
尊を縛り付ける過去。
苦しめる過去がどんなものなのか。
私には計り知れない。