溺愛妖狐ひろいました
★過去も抱きしめて
ただ、沈黙が流れていた。
尊は話し終えると俯き、不安そうにギュッと手を握りしめた。
白銀は何の感情も見せず少し離れた場所に座っている。
想像した以上に、辛い過去に私は何と言ったらいいのだろう。
私の言う言葉なんて、きっととてもちんけでなんの慰めにもならない。
「・・・おれ、やっぱシロと行く」
「え」
「人に話してようやく分かった。おれがしたことは、傲慢でエゴで、自分勝手で・・・最低なことで。おれの手は汚れてる」
「そんな事、・・・」
そんなことない、なんて安易な事言えなかった。
現実にきっと人は死んでて、それが尊のせいで。
私の知らない人だけれど、確かにそこに生きていた人で。
その命を、無情に終わらされたんだ。
どんな理由があったにせよ、それはいけないことで。
きっとそれは、妖狐の世界でも同じで。
だからこそ、尊は追われ罪に問われている。
「なんでこんな大事な事忘れてたんだろう。巴の事あんなに大事だったのに・・・」
「大事、だったからじゃない?」