溺愛妖狐ひろいました
☆つかの間の幸福
尊が戻って来た。
それでも、尊はもう人に姿を見せることはできない。
初めの頃のように、アパートの中だけの生活に戻った。
「亜子!おかえり!」
仕事を終えると、待ち構えていたかのように尊が飛び出してきて驚く間もなく抱きしめられる。
想いが通じ合ってから、尊から向けられる思いやスキンシップは以前にも増して濃くなった。
「ただいま、尊」
「あのね、ご飯作ったよ」
「え?尊が?」
「うん。簡単なのだけど」
「嬉しい!すぐに準備するね」
一度ギュウッと尊の身体を抱きしめ、尊の存在を確かめた後そう言って急ぎ足で洗面所に向かう。
少しでも深く、濃い時間を過ごしたい。
きっと、二人の想いは同じなんだ。