溺愛妖狐ひろいました
「もう一つ。尊はそのことを知らない」
「え・・・」
「お前がたとえここで契約を交わしたとして、それを尊が知ることはない」
尊は、私が待っていることを知らずに数百年過ごすという事。
「尊自身がお前の事を忘れるという結末も、ありうるという事だ」
「・・・そんな」
尊の中で、私の存在はどれほどなのだろう。
いつまでも覚えていてくれるだけの存在でいられるだろうか。
それとも、その百年のうちに忘れ去られてしまうだろうか。
「それ自体が、罰の内だ」
「・・・そう」
「だから、お前がいくら待っていたとしても。あいつがお前の事を忘れてしまえば意味のないものになる。大きな賭けとなるが、どうする」
未来なんてわからない。
私自身の事も。
ましてや尊の事なんて。