溺愛妖狐ひろいました
「きもちぃ。亜子、ありがと」
「どういたしまして」
「お風呂って、疲れるんだね」
「そうかな。慣れたらきっと気持ちよくなるよ」
ミコトを見ると、確かにどっと疲れている様。
うとうととうつらうつらしている。
「亜子は、優しい。だから好き」
「え・・・」
「人間、皆亜子ならいい」
「・・・ありがとう」
うつらうつらと、うわごとのようにそう言ったミコトの言葉。
嬉しくもあり、切なくもあった。
ミコトが抱えているものを、私は何一つわかってあげられない。
なにも覚えていないはずなのに、人間への嫌悪感だけは覚えているなんて。
よほどのことがあったとしか思えなくて。
それが知りたいような、それでも、ミコトにそんな辛いことであろうことを思い出してほしくないような。
出会ってまだ数日のミコトにすっかり絆されている私なのだった。