溺愛妖狐ひろいました
★見えてきたもの
「なんだか、最近亜子楽しそうね」
「へ?」
お昼休憩中、一緒に食堂にいた秋穂が珍しいものでも見るようにそう言った。
楽しそう・・・?
「先輩のことがあって、気落ちしてるかと思ったんだけど」
「それは・・・。ほんとにショックだったよ。ずっと憧れてた人だったから・・・」
きっとまだちゃんとふっ切れてはいない。
自分の気持ちを誤魔化して、気を反らしているだけのような気がする。
でも、気が反らせる誤魔化せるものが今の私にあるっていうのは、事実だ。
「でも、今は・・・。他に気になることがあるから」
「気になること?なにそれ。すごい興味ある」
「大したことじゃないよ。なんていうか・・・。拾ったの」
「拾った?なにを」
「えっと・・・、犬・・・というか、なんと言うか」
さすがに狐、なんて言っても信じてもらえないよね。
ましてや妖狐だなんて。
「え、犬拾ったの?」
「そう。だから、いまその子の世話が忙しくて・・・」
「それで、充実してるってわけ?なんかそれ、逃避してない?」
逃避といわれたらその通りだと思うけど。
でも、今私にとってミコトは大切な護るべき存在なの。