ビルの恋
再会
PCの入力作業を止め、画面右下の時間を見る。

8時35分。

上司のサイモンが出勤するまであと15分。

コーヒーを買いに行く時間だ。

デスクの引き出しから手提げを取り出し、財布を入れる。

廊下に出る時、同僚の本条君とすれ違う。

徹夜明けのようだ。

昨日と同じシャツに、しわがやや目立っている。

院卒2年目の26歳で、私より3歳年下。

若くて体力があるとはいえ、寝ていないのは辛いだろう。

朝食は摂ったのだろうか。

「何か買ってくる?」

声をかける。

「大丈夫です。
さっき下のコンビニ行ってきました」

本条君が、やつれた笑顔で答える。

「そう。お疲れ様」

廊下に出て、ちょうど停まっていたエレベーターに滑り込む。

1階のボタンを押す。
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